JJサクライ量子力学第三版上巻を参考にさせていただきました。
理系大学生や、文学を読むのが好きな方のために、こちらのページで無料で多数の本が読めるリンクをまとめています。非常に有益ですので是非お読みください。
変換公式
まず結論となる変換公式を載せます。
座標表示の波動関数への変換公式は
$$\psi_{\alpha} (x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} exp(\frac{ipx}{\hbar}) \phi_{\alpha} (p) dp$$
運動量表示の波動関数への変換公式は
$$\phi_{\alpha} (p)=\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} exp(\frac{-ipx}{\hbar}) \psi_{\alpha} (x) dx$$
これらを以下で示します。
必要な前提知識
全て量子力学において基本事項です。内容は知っているものとして、今回の目的のための道具として紹介だけします。
①内積の関係式
$$\langle \alpha | \beta \rangle = {\langle \beta | \alpha \rangle}^*$$
②固有値方程式(特に運動量について)
$$ \hat{p} |p\rangle =p |p\rangle$$
pハットは演算子(エルミート演算子)で、pは固有値なので数(実数)です。
③完全性関係式
$$ \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} |x\rangle \langle x | dx=\hat{1}$$
$$ \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} |p\rangle \langle p | dp=\hat{1}$$
④規格化条件(特に位置について)
$$\langle x | x’ \rangle =\delta (x-x’)$$
⑤波動関数の定義
波動関数(位置表示)の定義:
$$\langle x | \alpha \rangle =\psi_{\alpha} (x)$$
波動関数(運動量表示)の定義:
$$\langle p | \alpha \rangle =\phi_{\alpha} (p)$$
⑥運動量の量子化
$$\langle x | \hat{p} | \alpha \rangle =-i \hbar \frac{\partial}{\partial x} \langle x|\alpha \rangle$$
⑦ディラックのデルタ関数の定義
$$ 2\pi \delta (x-x’)=\int_{-\infty}^{\infty} exp[ik(x-x’)]dk$$
及び、ド・ブロイの関係式
$$ p=\hbar k$$
から導かれる
$$ 2\pi \hbar \delta (x-x’)=\int_{-\infty}^{\infty} exp[i \frac{p}{\hbar} (x-x’)]dp$$
導出の指針
変換公式を求めようとしている以上
$$\psi_{\alpha} (x)=(変換するための関数) \phi_{\alpha} (p)$$
$$\phi_{\alpha}(p)=(変換するための関数) \psi_{\alpha}(x)$$
という関係が欲しいです。これは③完全性関係を使えば次のように表示できます。
$$\psi_{\alpha}(x)=\displaystyle \int dp \langle x|p \rangle \langle p|\alpha \rangle =\displaystyle \int dp \langle x|p \rangle \phi_{\alpha}(p)$$
$$\phi_{\alpha}(p)=\displaystyle \int dx \langle p|x \rangle \langle x|\alpha \rangle =\displaystyle \int \langle x|p \rangle ^{*} \psi_{\alpha}(x)$$
ここで注目すべきは、両方の変換に共通する関数である
$$f(x,p)= \langle x|p \rangle $$
です。式を見ればわかるように、これが波動関数の変化を担っている関数であるから変換関数と呼ばれます。ですからこれを求めれば勝ちというわけです。
変換関数を求める
まず⑥を用いると
$$\langle x | \hat{p} | p \rangle =-i \hbar \frac{\partial}{\partial x} \langle x| p \rangle$$
となります。一方、固有値方程式②を用いると
$$\langle x | \hat{p} | p \rangle =p \langle x| p \rangle$$
となります。
両方の式の左辺は等しいことから
$$p \langle x| p \rangle = -i \hbar \frac{\partial}{\partial x} \langle x| p \rangle$$
という微分方程式が成り立ちます。というのも、波動関数の定義⑤より
$$\langle x| p \rangle=f(x,p)$$
と、二変数関数として表せるからです。
つまり微分方程式は
$$pf(x,p) = -i \hbar \frac{\partial}{\partial x} f(x,p)$$
という形に書くことができます。これを解くと
$$f(x,y)=\langle x| p \rangle=N exp(\frac{ip x}{\hbar})$$
が求まります。実際に微分方程式に代入してみてください。Nは規格化因子で、次はこれを求めます。
$$\langle x | x’ \rangle =\langle x | \hat{1} | x’ \rangle$$
となるので、これに完全性関係式③を使うと
$$\langle x | x’ \rangle =\langle x | (\int_{-\infty}^{\infty} |p \rangle \langle p| dp)| x’ \rangle=\int_{-\infty}^{\infty} \langle x |p \rangle \langle p| x’ \rangle dp$$
となります。先ほど求めた関数を代入しましょう。
$$\langle x | x’ \rangle ={|N|}^2 \int_{-\infty}^{\infty} exp[ \frac{ip(x-x’)}{\hbar}] dp$$
ここでデルタ関数の定義⑦を用いると、この式の右辺は
$$(右辺)=2 \pi \hbar {|N|}^2 \delta (x-x’)$$
となります。また、規格化条件④より左辺は
$$(左辺)=\langle x| x’ \rangle =\delta (x-x’)$$
となるので
$$\delta (x-x’)=2 \pi \hbar {|N|}^2 \delta (x-x’)$$
という等式から
$$N=\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}}$$
と求めることができます。結局求めたかった規格化された変換関数は
$$\langle x| p \rangle=\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} exp(\frac{ipx}{\hbar})$$
です。
波動関数の変換式を導出
座標表示
完全性関係式③より
$$\langle x| \alpha \rangle=\langle x |\hat{1} | \alpha \rangle=\int_{-\infty}^{\infty} \langle x|p \rangle \langle p| \alpha \rangle dp$$
が成り立ちます。これに先ほど導いた規格化された変換関数を代入すると
$$\langle x| \alpha \rangle= \frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} exp(\frac{ipx}{\hbar}) \langle p| \alpha \rangle dp$$
となります。これに波動関数の定義⑤を用いることで、求めたい座標表示の波動関数への変換式
$$\psi_{\alpha} (x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} exp(\frac{ipx}{\hbar}) \phi_{\alpha} (p) dp$$
を導くことができました。
運動量表示
座標表示の時と同様です。
完全性関係式③より
$$\langle p| \alpha \rangle =\int_{-\infty}^{\infty} \langle p| x \rangle \langle x| \alpha \rangle dx$$
この式に先ほど求めた関数を代入します。その前に、内積の関係式①を使うと
$$\langle p|x \rangle={\langle x| p \rangle}^*=\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} exp(\frac{-ip x}{\hbar})$$
となることがわかるので、これを代入します。
$$\langle p| \alpha \rangle =\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} exp(\frac{-ip x}{\hbar})\langle x | \alpha \rangle dx$$
後は波動関数の定義⑤を用いると運動量表示の波動関数への変換式
$$\phi_{\alpha} (p)=\frac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} exp(\frac{-ipx}{\hbar}) \psi_{\alpha} (x) dx$$
を導くことができました。
理系大学生や、文学を読むのが好きな方のために、こちらのページで無料で多数の本が読めるリンクをまとめています。非常に有益ですので是非お読みください。